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Text File  |  1994-11-16  |  2KB  |  34 lines

  1. 557/571   WST00364  和田 光平         粋は身を食ふ(江戸)
  2. ( 8)   94/05/15 16:21
  3.  
  4.        粋は身を食ふ(江戸)
  5.  
  6.  ちょっと粋ですねと他人に言われ,その気になって,粋であろうとする.それが次第
  7. に高じて,ついには本業を潰してしまう. 
  8.   有名な紀伊国屋文左衛門は,ミカン船でもうけたお金を,全部吉原で使い果たし,
  9. 江戸っ子から,粋な人だと喝采をあびたそうです.ミカンがスイから,粋になったなん
  10. て洒落を言っているうちは野暮と言うもの.
  11.   紀伊国屋は没年享保19年(1734), 元禄期の商人です. 明暦三年の大火(1653)を筆頭に
  12. 江戸の火事が一番盛んなころ, 材木で大儲けしたのでした. 日光東照宮の造営で儲けた
  13. 奈良屋茂左衛門と, 吉原で競いあって遊んだ話が残っています. 
  14.  吉原の揚屋は, 江戸中期の宝暦11年(1761)に消滅し, 手軽に遊べる引手茶屋の時代に
  15. 代わります. 用語は似ていますが, かなり違った遊び方でした. 元の揚屋遊びの豪快さ
  16. をガイドブックに従って解説しますと, まず, 太鼓持ちと女芸者数人を従えて行くこと
  17. が常識です. 大門をくぐり仲の町の右側に並ぶ揚屋に, 太鼓持ちが案内するままに揚が
  18. る. 揚屋が, 通か野暮かを判定し, 野暮だとここで追い返されます. 揚屋に身元保証を
  19. してもらって初めて遊女を呼んでもらえます. ここから呼ぶ遊女は最高位の太夫か二位
  20. の格子女郎まででした. 揚げ代は一両前後. 揚屋差紙で連絡を受けた遊女屋さんから, 
  21. ご指名の太夫が妹女郎の新造や禿を従えて揚屋に向かいます. この行列が「道中」で, 
  22. 今に伝えられている「花魁道中」の原型になったものです. 
  23.   お客は太鼓持ちのなすままに, 上座に太夫を迎え, ご対面するだけでその日はお終い
  24. です. 宴会費はもちろん, 遊女のお供, 揚屋の従業員にまで, ご祝儀をはずみます. 
  25.  しかし,太夫にふられたら, ここでお終い. 首尾よく気にいられるかどうかは, 太鼓
  26. 持ちと女芸者連中の取り持ち次第だったようです. 連中への日頃のケアーが大切だった
  27. のです. かくして「裏を返す」二回目の登桜になり, また前回同様の宴会をはって, 
  28. その日もお終い. 床入りは, 三回目に成立する仕組みです. 新調の夜具代が50両もして
  29. 泣きなのですが, その後も四季の衣装, 本人分, 新造分と負担は急激に増加します. 
  30.  馴染みになると他人の手紙を見せるようになるが, ジェラシーを抱かせるだけが目的
  31. なので, 親しみの表現と勘違いして, それは読まない方が良いとあります. 
  32.   当時のガイドは現代にも通用するシビアな名作です. 
  33.                            東海支社)和田 光平
  34.